Scar Revision (瘢痕形成術)
傷痕(瘢痕)を切除し、目立ちにくくなるように縫合する治療です。
傷痕の創縁(縫合後の辺縁)を皮膚のシワと一致させたり、創縁にかかる緊張を分散させたり、創縁の凸凹の修正・再発防止や、視覚心理的効果で外観を目立ちにくくするために、「皮弁形成術」という皮膚に切れ目をいれ移動させて縫合する方法を併用する場合があります。
【症例】

約1年前に猫に右頬を引っ掻かれてできた瘢痕です。深部まで達した傷痕は硬い瘢痕組織になり、その位置で皮膚表面と皮下の瘢痕組織は固定されてしまいます。そのため瘢痕の頭側の弛んだ皮膚が乗っかるような形になり膨らんで見えます。

手術では瘢痕を切除したのちに創縁の中央に一カ所Z形成術(三角皮弁)を行っています。

二つの三角皮弁を入れ替えて縫合し直線の傷を二つに分散させ細分化することで、光の反射で傷痕をぼかしたり、傷痕が一直線になり目立った印象になるのを防ぎ(視覚心理的効果)、さらには凸凹を改善しています。

術後の色素沈着がまだ残っています。

色素沈着は大分薄くなっています。術前にあった瘢痕の頭側の膨らみは改善しています。
【症例2】
約30年前にロードバイクで転倒され下顎を受傷されました。かなり深い傷だったそうですが、病院を受診し軟膏処置で保存的に治療したそうです。索状に肥厚した部分と瘢痕の引きつれによる陥凹が生じています。
瘢痕を切除しW形成術を行いました。
W形成とは傷の縫合をあえてジグザグの形に縫うことによって、シワに沿わない瘢痕の向きをかえて目立ちにくくする効果や、上述した視覚心理学的効果、破線効果(瘢痕の各所にシワに一致した部分が生じ、表情時には正常のシワにかくれ、一本の直線が破線に変化して人にあたえる印象が弱くなること)を得ることができます。
以下創部の拡大写真を提示します。

過去に転倒し前額を受傷し、救急外来で縫合処置を受けました。その後傷跡が凹んで目立ったため約1年前に瘢痕形成術を受けたとのことです。術後数カ月してからまた同じように陥凹して目立つようになったため当院を受診されました。術前の写真では線状に凹んでいるのが分かります。どのような手術を受けたのか伺ったところ、凹んでいる前額の部分の瘢痕を切除して、また線状にそのまま縫合したとのことでした。また凹んでくるかもしれないと言われたそうです。
これは傷痕の部分が縮むということがとてもよく分かる症例です。けがや手術による傷は、治る過程で少しずつ収縮します。瘢痕を切除してそのまま縫合し直しても、傷痕は水平方向、垂直方向にまた収縮するため、時間が経つと同じように凹んでしまいます。

当院ではW形成術を行いました。 W形成でジグザグにすることにより、縮もうとする力を分散させ(細かい三角形がかみ合ったようになるため線状にも凹みづらい)、伸び縮みの動きによる引きつれ防止(アコーディオン効果)や、前述したシワに沿わない瘢痕の向きを変えて目立ちにくくする効果(本症例では前額は横のシワのため、w形成のジグザグの辺が1方向は横のシワの向きに一致するようにデザイン)が得られます。
