YUKI皮フ科形成外科

手術(皮膚腫瘍摘出術)の実際の流れ 

日々遠方からもたくさんの患者さんに受診していただき、診察、手術をさせていただいていると、患者さんごとに手術に持たれているイメージや不安の度合いの違いに驚かされます。少しでも不安の軽減になればと思い、一般的な手術(ここでは皮膚腫瘍摘出術に限って)の流れについて、具体的な症例をもとに写真付きで説明します。

 

まずは手術を行う前に悪性が疑われるかどうかを判断します。ホクロ治療についての回でも説明しましたが、皮膚表面のできものではダーモスコピーという虫メガネのような道具を用いることが多いです。皮下の腫瘍の場合はエコー検査で大きさ、深さ、性状、血流の有無を検査します。場合によってはCTやMRI検査も行うこともあります。

 

今回の症例では、ダーモスコピーで基底細胞癌という悪性の腫瘍の可能性も否定できず、大きさも4mm大と小さかったため、腫瘍辺縁から距離を少し離して完全に切除して、病理組織検査を行う方針としました。

 

 

次にデザインです。デザインは縫い上がりの後の傷痕が、シワのラインに一致するようにデザインするのが原則です。((注)部位によってはこの限りではありません)

 

 

次に局所麻酔注射をします。麻酔には痛みを取り除く以外に、エピネフリンによる止血効果を得るという目的もあります。当院では、局所麻酔の手術では注射時の痛みを少しでも軽減するために27Gもしく30Gという細い針を使用します。麻酔後は基本的に最後まで無痛で手術を受ける事ができます。

 

皮膚切開し、腫瘍を切除します。初心者が切除すると、中心だけ深く辺縁は浅くなりがちで、腫瘍が残存してしまうことがあるため辺縁の深部もしっかりと取りきります。切除した腫瘍は検体として、病理組織検査に提出します。

 

 

次にバイポーラーという器械を用いて止血をします。

 

次に創縁周囲の皮下剥離(undermine)を行った後に、中縫い(真皮縫合)を行います。中縫いは吸収糸(半年くらいかけて体内に吸収される糸)で行います。顔面は傷痕を極力盛り上げないように縫合します。肩や背中などのテンションがかかりやすい部位では、傷痕をあえて盛り上げた状態になるように縫合します。(テンションがかかりやすい部位で、縫合直後に平らな状態になるように縫合すると、時間の経過とともに幅広い傷痕になってしまうため)

 

 

最後に外縫い(皮膚縫合)を行います。皮膚縫合は基本的にナイロン糸を使用します。最後にガーゼなどで圧迫固定し、手術は終了です。

 

 

抜糸は約1週間で行います。(部位によって期間は異なります)

今回の症例の病理結果は、基底細胞癌(BCC)という悪性皮膚腫瘍でした。辺縁も深部も断端陰性であり、完全に切除できていました。今後は定期的に経過フォローを行います。

 

 

少しでも手術の不安軽減につながれば幸いです。

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