YUKI皮フ科形成外科

ホクロ治療について 〜手術それとも炭酸ガスレーザー?〜

「ホクロってレーザーで取るのと、手術で取るのどちらがいいですか?」
「色んな皮膚科のクリニックで、ホクロはレーザーで取るって言われたんですけどそれって本当ですか?」
などの質問が、最近とても多く聞かれます。そのため今回はホクロの治療についてまとめたいと思います。(個人的な意見も入ることをご了承下さい)

まず最初に、ホクロの治療を始める前にとても大切なことは、
これって本当にホクロなの?ということです。
ホクロだと思っているものの中には、悪性の癌も混じっていることがあります。
そのため、少しでもホクロっぽくない所見がある場合、例えば形が左右非対称、潰瘍を伴う、出血しやすい等の所見がある場合は、ダーモスコピーという道具を使った検査が必要になります。その検査でもやはり悪性が疑われる場合は、組織を一部だけ切除して調べる生検術を行う必要があります。

以上をクリアした後に、ホクロを取る場合に、現在では以下の2通りの方法があります。(レーザーの中にはエルビウムヤグレーザーという種類のものもありますが、水に吸収されて焼灼するという点は同じなので炭酸ガスレーザーと同じくくりにしています。)

  • 手術(皮膚腫瘍切除術)
  • 炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)

手術とは、メスで皮膚を切って、ホクロを切除するものです。切除した部分は、皮膚の下は吸収される糸で、皮膚の表面は吸収されない糸で縫合します。通常の場合は縫い上がりはシワのラインに沿った1本の線になります。

ホクロ切除
左下眼瞼ホクロ切除
左下眼瞼ホクロ切除
治療内容: 皮膚腫瘍切除し縫合(dog ear修正)
副作用(リスク):再発・肥厚性瘢痕・dog ear
費用: 4,980円(皮膚腫瘍摘出術(露出部直径2cm未満))
費用: (保険適応 自己負担3割の場合)(別途で病理検査代3,030円)
治療期間: 術後約1週間で抜糸
治療内容: 皮膚腫瘍切除し縫合(dog ear修正)
副作用(リスク):再発・肥厚性瘢痕・dog ear
費用:4,980円(皮膚腫瘍摘出術(露出部直径2cm
費用未満))(保険適応 自己負担3割の場合)
費用(別途で病理検査代3,030円)
治療期間: 術後約1週間で抜糸

このように組織の断裂や欠損部が、外科的に一期的に閉鎖されて治癒する過程のことを『一次治癒』と呼びます。

瞼の傷痕は比較的早く目立ちにくくなります。

治療内容: 皮膚腫瘍切除し縫合
副作用(リスク): 再発・色素沈着・dog ear
費用: 1個あたり4,980円
費用: (保険適応 自己負担3割の場合)(別途で病理検査代3,030円)
治療期間: 術後約1週間で抜糸
治療内容: 皮膚腫瘍切除し縫合
副作用(リスク): 再発・色素沈着・dog ear
費用: 1個あたり4,980円
費用(保険適応 自己負担3割の場合)
費用(別途で病理検査代3,030円)
治療期間: 術後約1週間で抜糸

 

その他のホクロ手術(切除縫合)症例はこちら

 

炭酸ガスレーザーは水分を含むものに吸収される性質を持ちます。
皮膚には水分が多く含まれるため、照射すると一瞬にして熱エネルギーに転換し、組織を蒸散させることが可能です。このように組織を蒸散して、焼いてススにしてしまうことにより、隆起したり色がついているところを削ることが可能です。削ってできた凹みは乾燥させてしまうと、痂皮(カサブタ)ができてその下に表皮が作られ、凹みが残ってしまう原因になります。
そのため軟膏を塗り、ガーゼや、創傷被覆材で覆って湿潤状態を維持するための処置が10〜14日必要になります。ホクロを取った部分は、赤みが最低約3ヶ月〜半年は残ります。

治療内容: 炭酸ガスレーザー照射にて黒子を焼灼
副作用(リスク): 再発・非行性瘢痕・陥凹
費用: 施術代24,000円(size3mm以下4個)
治療期間: 施術後1~2週間創傷被覆材を貼付
右鼻翼ホクロ
眉毛外側ホクロ
左頬ホクロ
治療内容
炭酸ガスレーザー照射にて黒子を焼灼
副作用(リスク)
再発・肥厚性瘢痕・陥凹
費用
施術代9,000円(size3〜5mm)
治療期間
施術後1〜2週間創傷被覆剤を貼付
下顎ホクロ
治療内容
炭酸ガスレーザー照射にて黒子を焼灼
副作用(リスク)
再発・肥厚性瘢痕・陥凹
費用
施術代14,000円(size3mm以下2個)
治療期間
施術後1〜2週間創傷被覆剤を貼付

ホクロをどのように治療した方がいいのか判断する上で、炭酸ガスレーザーでの傷の治り方を理解することが大切です。

傷は浅い傷の場合は(真皮まで)、真皮の中の毛穴や汗管の部分から、表皮細胞が遊走して傷の表面を覆い、新しい皮膚ができます。
深い傷の場合(脂肪層まで達する)は、創面を肉芽組織(血管、線維芽細胞などから構成される組織)が覆った後に、肉芽組織自体が収縮して傷を小さくして、さらにその上を周囲から表皮細胞が遊走して新しい皮膚を作ります。
傷が乾燥してしまうと肉芽組織が壊死してしまったり、表皮細胞が遊走できないため、湿潤状態にするのはとても大切です。

このように開放創が、保存的治療によって、肉芽形成と収縮および創縁からの上皮形成により閉鎖し治癒する過程のことを、『二次治癒』といいます。これらの治癒過程において血流はとてもとても大切です。
炭酸ガスレーザーでホクロを除去した場合は、この『二次治癒』で傷口が治っていきます。

ホクロ1年後
治療内容: 炭酸ガスレーザー照射にて黒子を焼灼
副作用(リスク):再発・肥厚性瘢痕・陥凹
費用:施術代18,000円(size3mm以下3個セット)
治療期間: 施術後1~2週間創傷被覆剤を貼付

炭酸ガスレーザーの適応を考える上で、大切になってくるのは以下の3点です。

①悪性の可能性はないか?
②部位(血流が豊富な場所か?瘢痕になりづらい場所か?)
③ホクロを除去した後に生じる欠損部の大きさ

順番に説明します。

① について

上で説明したように、炭酸ガスレーザーは、除去するものを焼いてしまうため、除去したものを検査で調べることができません。除去したものを病理検査(顕微鏡で細胞をみる検査)で調べたい場合は、手術で切除しましょう。

② について

傷の残りやすさは、部位によって異なります。顔や首など血流が豊富で、比較的緊張がかかりづらい場所は、かなり綺麗に治るため炭酸ガスレーザーの良い適応です。逆に手足や、体幹などは傷跡が目立つ場合もあるため、手術で切除・縫合が良い場合があります。

③ について

顔などの血流が良い場所では、かなりの大きさでも綺麗に治りますが、それでも大きさが1cmを越えるような大きなものは、炭酸ガスレーザーで削って、軟膏で治す『二次治癒』で治した場合、赤みがひくのも時間がかかり、傷跡としても残りやすいです。(先生によっては顔のホクロは、全て炭酸ガスレーザー治療で時間がたてば綺麗になるという方もいらっしゃいます。あくまで私個人の意見です。)そのため、大きさがかなり大きいものに関しては、手術をご提案しております。

最後にメスを使ってホクロをとる場合のデメリットについて説明します。

小さい点のような、メスで綺麗に切除するのも困難なくらい小さなものは、メスを使って無理に取ろうとすると、逆に創縁を痛めて傷跡が汚くなることがあります。また丸いものを切除して、そのまま縫合すると、切除した中心部は凹み、両端が盛り上がります。これをdog earと呼ばれたりします。

ホクロ1年後
治療内容: 皮膚腫瘍を切除し縫合
副作用(リスク):再発・肥厚性瘢痕・dog ear
費用: 4,980円 (皮膚腫瘍摘出術 (露出部直径2cm未満))
費用: (自己負担3割の場合)(別途で病理検査代3,030円)
治療期間: 術後約1週間で抜糸
治療内容: 皮膚腫瘍を切除し縫合
副作用(リスク):再発・肥厚性瘢痕・dog ear
費用:4,980円
費用:(皮膚腫瘍摘出術 (露出部直径2cm未満))
費用:(自己負担3割の場合)
費用:(別途で病理検査代3,030円)
治療期間: 術後約1週間で抜糸

このようにならないように、余分な皮膚を取ったり、様々な工夫をします。
これには術者の技術によって差がでます。また顔の場所によっては、傷跡が唇や鼻の穴にかかったりして、単純に切除して縫合してしまうと変形を来す場合などがあり、適宜工夫をしたり、炭酸ガスレーザーを選択した方が良い場合があります。

以上長くなりましたが、このようなことを考えて、手術がよいか、炭酸ガスレーザーがよいか判断していますというご紹介でした。

 

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